「お父さん、赤信号だったよ!」 「え? 青だっただろう?」
一緒に歩いている時や、車で親の自転車とすれ違った時、こんな会話をしてゾッとした経験はありませんか? 明らかに赤信号なのに、悪びれもなく渡っていく高齢者。
「マナーが悪くなった」 「頑固になった」
そう片付けてしまいがちですが、実はこれ、性格の問題ではありません。 脳の老化による「見えているのに見えていない」現象である可能性が非常に高いのです。
今回は、なぜ高齢者は信号無視をしてしまうのか、その科学的なメカニズムと、そこから引き起こされる「自転車事故」の恐ろしいリスクについて解説します。
1. 視力は良くても「脳の視野」が狭くなっている

高齢者の自転車事故の原因として、まず挙げられるのが「有効視野(ゆうこうしや)」の狭まりです。
「有効視野」とは?
人間が一点を見つめている時に、同時に情報処理できる範囲のことです。 眼科で測る「視力」や「視野検査」とは別物です。目では景色が映っていても、脳が「そこに車がいる」「信号が赤だ」と認識できる範囲は、年齢とともに極端に狭くなります。
- 若者: 景色全体を広く認識できる(ワイドレンズ)
- 高齢者: 中心部分しか認識できない(トイレットペーパーの芯を覗いている状態)
つまり、親御さんは嘘をついているわけではなく、「信号機が脳の処理範囲から外れていた(見えていなかった)」というのが真実なのです。
2. 「一点集中」が招く赤信号の見落とし
自転車の運転は、実は高度なマルチタスクです。
- ペダルを漕ぐ(運動)
- バランスを取る(平衡感覚)
- ハンドル操作をする
- 周囲の車を見る
- 信号を見る
脳の前頭葉機能が低下すると、このマルチタスクが苦手になります。 例えば、段差やふらつきに気を取られ、「転ばないように運転する」ことに脳のメモリを100%使ってしまうと、「信号を見る」というタスクが抜け落ちてしまうのです。
「注意散漫」なのではなく、むしろ「運転に必死すぎて周りが見えていない」状態と言えます。
3. 「行ける!」と思った時にはもう遅い
もう一つの原因は、「身体能力と自己イメージのズレ」です。
信号が黄色から赤に変わりそうな時、若い頃の感覚で「今のスピードなら渡り切れる」と判断します。しかし、実際には筋力が低下しており、思ったほどペダルが進みません。
結果として、「渡りきれるつもりで交差点に進入したが、途中で赤になり、車と衝突する」という典型的な出会い頭の事故が起きてしまうのです。
4. もし事故が起きたら…待ち受ける「ダブルの恐怖」
親御さんが「悪気なく」信号無視をして事故を起こした場合、待っているのは非常にシビアな現実です。

恐怖①:親自身の身体が耐えられない
高齢者の骨はもろくなっています。転倒しただけで「大腿骨骨折」や「腰椎圧迫骨折」を起こしやすく、そのまま寝たきりや認知症の進行につながるケースが後を絶ちません。 「ちょっと転んだだけ」が、家族の介護生活の始まりになるのです。
恐怖②:「過失割合」が大きくなる
ここが重要です。いくら「脳の老化で見えていなかった」と主張しても、法律上、信号無視は重大な過失(ルール違反)です。 相手(自動車など)とぶつかった場合、こちらの過失割合が大きくなり、相手からの治療費などの補償が十分に受けられない可能性があります。
それどころか、相手を避けて怪我をさせてしまった場合、「加害者」として数千万円の賠償責任を負うことさえあるのです。
5. いますぐできる対策と「最悪の事態」への備え

では、どうすれば良いのでしょうか? 「自転車に乗るな」と言うのが一番ですが、買い物や通院の足として奪うのが難しい場合も多いでしょう。
対策①:派手な色の服を着せる
親の認識力を上げるのは難しいため、「周りに気づいてもらう」作戦です。車側が早く気づいてくれれば、事故は防げます。
対策②:自転車用ヘルメットの着用
転倒時の頭部損傷を防ぐ最後の砦です。
対策③:「自分を守る」ための金銭的な盾を用意する
どれだけ注意しても、脳の老化によるミスをゼロにすることはできません。 だからこそ、「万が一、加害者になってしまった時」や「自分の治療費が出ない時」のための備えが必須です。
実は、月々1,000円程度で、高齢者の「加害事故の賠償」と「自身の骨折・入院費」の両方をカバーできる「共済」という方法があるのをご存知でしょうか?
一般的な自転車保険ではカバーしきれない、シニア特有のリスク(自身のケガへの備えなど)に特化した、非常に心強い制度です。
「親が自転車に乗っているけれど、保険なんて入っていないかも…」 「もし事故を起こしたら、ウチの家計はどうなるの?」
そんな不安がある方は、ぜひ以下の記事で「シニアのための交通共済の選び方」をチェックしてみてください。事故が起きてからでは遅いのです。
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